最大30分先のゲリラ豪雨を予測する気象レーダの実証実験を開始

情報通信研究機構(NICT)をはじめとする研究グループは、内閣府のSIP「レジリエントな防災・減災機能の強化」の施策として、2017年度に開発した世界初の実用型「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」を用いた実証実験のための観測を2018年7月初めから開始した。

MP-PAWRは、30秒から1分で雨雲の高速三次元観測が可能なフェーズドアレイ気象レーダ(PAWR)と雨量を高精度で計測できるマルチパラメータ(二重偏波)レーダの機能をあわせもった気象レーダ。

急激に発達する積乱雲による豪雨から国民の安全を守るとともに、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会など特に夏季に開催される競技の運営にも役立つ技術。研究グループは、MP-PAWRを活用して最大30分先のゲリラ豪雨を予測し、市民や自治体等へ予測情報を伝達する実証実験を開始する。

SIPとは、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP: Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program)の略称。総合科学技術・イノベーション会議が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために2014年に創設したプログラムのことだ。

MP-PAWRは、水平偏波と垂直偏波を同時に送受信する二重偏波機能を有し、10方向以上を同時に観測可能なDBF(デジタル・ビーム・フォーミング)のリアルタイム処理機能を搭載した気象観測専用のフェーズドアレイレーダ。フェーズドアレイ気象レーダにマルチパラメータ(二重偏波)機能を追加することにより、高速3次元観測性能を保ちつつ、雨量の計測精度を格段に向上させている。