自動車
運転の楽しさを科学する、実証実験をEVで行った結果――
ある人は車の運転を「楽しい!」といい、ある人は「楽しくない」という。またある人は「やっぱマニュアル車じゃなきゃ......」と、電気自動車(EV)が台頭しつつある時代に化石燃料車、それも今どき希有なMT車のクラッチペダルを踏んでシフトレバーを3速に叩き込む。
車を走らせる原動力は様々あれど、運転が楽しいか楽しくないかは主観に決まっている――。統一不可能な人の趣味嗜好に、技術や科学など関係ないと思っていたら今日、「ペダル操作の違いが運転者の心理状態と脳活動に及ぼす影響」について、これを共同研究する日産自動車と、産業技術総合研究所の自動車ヒューマンファクター研究センターが、22~55歳の男女12名に「ノート e-POWER」を駆ってもらった結果を発表した。
産総研はドライバーを含む様々な作業者の認知状態を客観的に推定・評価する技術を開発していて、同技術が、作業の楽しさや難しさに関連して生じる注意状態(作業に配分される注意資源量)の変動の評価に有用だと科学誌『Biological Psychology』等で報告している。そして日産は、EVなどでの新しい運転操作系が認知状態に与える影響を調べることが、人間に適合した設計を推進するうえで重要と考え、今回、産総研とともに実証に取り組んだ。
各実験参加者が二つのドライブモード――アクセルペダルを戻した際の減速度がガソリン車と同等の「ノーマルモード」と、これよりも減速度が強い「Sモード」で、交互に12回ずつ一般道路11.3 kmを運転した。ノートの運転中に脳波を計測し、運転後に心理状態をアンケートした。結果、新しい"ワンペダル操作"、およそアクセルペダルのみで加速と減速を行えるSモードでの走行時に「運転がより楽しく感じられる」ことが示された。
ワンペダル操作での運転が、楽しさの決め手となる脳の"作業集中状態"を自然に引き出しうることもわかったという。