自然環境での未知微生物の役割を新手法で解明

産総研は、日本触媒と共同で、産総研で確立した、従来法より500倍の検出感度を有する「高感度同位体追跡法」を用いて、石油化学工業廃水中の有害物質「1,4-ジオキサン」を分解する微生物を多数発見するとともに、それらが協働的に働いて安定的な分解を維持できることを明らかにした。

環境管理研究部門環境微生物研究グループ 堀 知行主任研究員、青柳 智研究員、生物プロセス研究部門環境生物機能開発研究グループ 菊池 義智主任研究員、地圏資源環境研究部門地圏微生物研究グループ 眞弓 大介主任研究員らが発表。

1,4-ジオキサンは、人への発がん性が疑われ、世界的な規制強化が進む有害物質である。近年、1,4-ジオキサンの処理方法として、低コスト・低環境負荷型の生物処理が大きな注目を集めているが、これまで1,4-ジオキサン分解菌は、時間と労力のかかる分離培養法でしか調べることができず、数種の分解菌しか知られていなかった。

今回、産総研で確立した分離培養に頼らない高感度同位体追跡法を用いて、石油化学工業廃水の生物処理槽から多種多様な1,4-ジオキサン分解菌を発見し、それらの分解菌が協働して1,4-ジオキサンを安定的に除去することを見出した。これは、自然環境中の未知微生物の機能解明と動態制御につながる成果と考えられるという。

今回、石油化学工業廃水の生物処理槽中の微生物の解析に用いた高感度同位体追跡法は、これまで理解できていなかった自然環境中の未知微生物の役割を解き明かす有効なツールと考えられ、今後、様々な物質分解・水循環プロセスに関与する未知微生物の評価・制御技術の確立に役立てられる。