産業界および社会でIoT(モノのインターネット)が広がる近年、さまざまな適用分野でこのしくみが生み出すデータ量が増え続けている。
カメラ、センサー、情報端末の種類が豊富かつ小型・高性能・低コスト化したため、さまざまな事象がデジタルデータ化されネット経由で蓄積されている。大量のデータをAI(人工知能)による高度な分析技法を用いて、あらゆる分野での課題解決――。データの収集・蓄積・機械学習がクラウド上で可能となり、新サービスへの期待も高まっているという。
日立情報通信エンジニアリングは、対象の状態を認識し、その先を予測するソフトウェア「状態予測エンジン」を来月1日から販売すると発表した。同ソフトウェアでは、製造装置の故障予測に基づいた先行対策による生産効率の向上や、人物の動きの予測から危険な予兆を捉え回避策を講じることが可能になる。
独自のアルゴリズムにより、画像情報やセンサーデータとパターン認識や経験則により生成される識別辞書からリアルタイムで先の状態を予測し、異常に至ると判断した場合は警告や対策案を提示する。
たとえば製造業において、FA機器の稼働中に振動センサーや音響センサー、電流センサーなどの出力データを監視し、それらのパターン変化から対象機器の内部状態の変化を予測。異常の予兆を捉えて対策を講じることで、製造設備等の故障や生産品の破損事故を未然に防げる。
また、踏切や駅ホーム、道路上においては、監視カメラにより車両や人物の動きを識別し、先の動作・進路予測から危険な予兆を捉え回避策を講じるなどして事故防止の支援をするという。
「状態予測エンジン」は、エッジ側に識別用、クラウド側に学習用エンジンを分離搭載可能で、効率の良いシステムを実現できる。そして、リアルタイム性を要しない定点観測や状態診断の場合は、両エンジンをクラウド側に構築して、リソース管理や保守運営の負担を軽減できる。