風力発電の稼働率アップに向けて

地球の温暖化および資源の枯渇を防ぐためにも、世界は電源の在り方を見直し、太陽光や風力といった再生可能エネルギーに注目している。

風力発電は、太陽光発電と並び大量導入が期待される。だが複雑な地形、気象条件等による風車の故障などがあり、国内の風車はメンテナンスのための停止時間が長く、設備利用率が低い水準に留まっているという。

NEDOと東京大学、産業技術総合研究所は、「スマートメンテナンス技術研究開発」において、風車の停止時間を削減し、設備利用率を向上させることを目的として、風車のCMS(状態監視システム)データなどとAI(人工知能)を活用した異常検知・故障予知技術を開発した。

風力発電の実機における軸受損傷進展実験を行い、ごく初期の損傷から故障に至るまでの振動の変化を確認したうえで、東京大学と産業技術総合研究所が所有するAIの技術を適用し、風車用CMSデータを分析する方法を検討――結果、従来困難とされてきた大型部品(主軸・増速機軸受)の異常兆候を検出可能な技術を開発し、部品損傷進展モデルを活用した診断予測技術も開発することに成功した。これらの技術を適用し、国内にある43基の風車で実証したところ、交換意思決定の1~3ヶ月前での異常兆候検知を実現し、約9割の異常検知率を達成した。

また、風車の運用実態を詳細に調査・分析し、これまで収集できなかった風車運用に関する情報の獲得を実現し、データを整理した。これらをもとに、IT(情報技術)を活用したタブレット情報蓄積装置「SMSプラットフォーム」を開発。このプラットフォームの仕組みを用いて現場作業を行った結果、メンテナンスの作業効率を向上させ、機器点検時間を最大40%短縮できることが確認できた。

今回の成果を活用することで、風車の停止時間を大幅に短縮し、風力発電の設備利用率が21%から23%に向上できるという。