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3次元のビル風をVRで可視化し対策へ
大きな建物が出現すれば、周辺の風向きや風の強さが変化する。いわゆるビル風は、設計者や事業主、そこに住まう人々にとって身近な問題であり、通常、実測や風洞実験、流体解析の結果に基づいて評価・対策が行われる。けれどもその対策は容易ではない。
風の流れは3次元であり、都市部や市街地などでは複雑な流れであることがほとんどだ。そのため、ビル風の検討を行う際、紙媒体の資料のように、実験・解析結果の一部分のみを切り出した2次元の情報だけでは、ビル風の全体像を把握しにくく適切な対策がとれないことがあるという。熊谷組は、仮想現実(VR)を活用した風環境可視化技術を開発。これにより、ビル風の原因をより容易かつ正確に把握することが可能となり、設計品質や住環境性能の向上が期待できるとした。
今回の技術は、「流体解析」と「VRアプリケーション作成」の二つのシステムで構成されている。 流体解析部分では、得られた風速や風向のデータを指定のフォーマットで出力。VRアプリ作成部分でこの解析データと建物周辺の3Dモデルを用いて、VR空間で風の流れを可視化するアプリケーションを作成する。アプリ作成プラットフォームにはUnityを使用し、画像を投影する端末機にはGear VRを採用した。
「流体解析ソフトウェアに依存せずVRによる可視化が可能」、「専用のPCが不要な端末を採用」、「複数人で同時にVRによる可視化が可能」といった特徴を備えていて、打ち合わせやプレゼンテーション時の出席者の意思疎通が図りやすくなるという。同社は、実際に熊谷組本社ビル周辺の風の流れを解析し、VRにより可視化した図を例示――。建物周辺に流れる風を視覚的にとらえられ、複雑な風の流れを目で確認できるとした。
今後、観測データ+のリアルタイム可視化、AR/MRなどの機能追加を重ねて、さまざまなケースにこの技術を適用できるようする考えだ。