入院患者の療養環境を最適化

鹿島建設とNECネッツエスアイは共同で、病院多床室の設備を患者個々の好みに合わせて自動制御する療養環境向上システム「NEM-AMORE」(ネマモーレ)を開発した。

このシステムは、鹿島建設が2016年10月に確立した睡眠環境向上技術と、NECネッツエスアイが持つ環境・バイタル情報を可視化、数値化するIoT技術、ホテル向けルームマネジメントシステムで培った環境制御技術を融合したもの。

デザインされた病室内に設置したセンサーから得た情報を基に、空調や照明などの設備機器をリアルタイムかつ自動で制御、最適化することで、入院患者各々の生活リズムに合わせた、快適な療養環境を提供する。

具体的には、患者の睡眠状態を検知する生体センサーと、病室内の騒音、照度、温度などを測定する環境センサーのデータを、NECネッツエスアイが持つIoT技術でサーバに収集・統合する。統合したデータを鹿島建設が確立した睡眠環境向上技術と照合し、室内環境の最適解を算出。

算出した最適解に基づき、NECネッツエスアイの環境制御技術を用いて設備機器をリアルタイムに制御することで、患者それぞれの睡眠状態に呼応した「音」「光」「温熱」、それぞれの理想的な室内環境を自動的に形成するという。

また、患者ごとの睡眠状況や、手動で調節した明るさや温度の記録が常にサーバに蓄積されることから、そのデータを基に患者個々の生活リズムや好みに合わせたオーダーメイドの室内環境を多床室で創出することも可能。

NECネッツエスアイによると、室内環境を整え、入院患者が良質な療養生活を送ることは、患者と医療施設双方にとって大きなメリットがあるという。患者にとっては、良質な睡眠を得られることで目が覚めにくくなり、夜間のベッド乗降やトイレの回数が減少し、転倒による怪我のリスク軽減が期待できる。

また、医療施設にとっては、患者が怪我するリスク軽減に加えて、夜間の呼出コールが減ることで医療スタッフの業務負荷が軽減され、就労環境の改善も見込めるという。

両社は、2018年度から年間200床以上を目標とし、リニューアルも含めたNEM-AMOREの医療施設への提案を本格的に推進する計画。