52万人のゲノム解析により脳卒中の病態を解明する新たな情報を発見
理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長、統計解析研究チームの鎌谷洋一郎チームリーダー、大阪大学大学院医学系研究科遺伝統計学の岡田随象教授および九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治教授、秦淳准教授らの国際共同研究グループが成功。
脳卒中は世界で2番目に死亡者が多い疾患。脳卒中は大きく虚血性(脳梗塞)と出血性(脳出血、くも膜下出血)に分かれ、脳梗塞はさらにアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞、ラクナ梗塞などの亜型に分類される。しかし、発症の分子レベルのメカニズムはいまだにあまり分かっておらず、新しい治療法の開発が進んでいないのが現状。
今回、国際共同研究グループは、欧州系、南北アメリカ系、アジア系、アフリカ系、そしてオーストラリア系の集団に、バイオバンク・ジャパンと久山町研究が収集した日本人集団を加えた、6万7,000人の脳卒中患者を含む52万人規模のゲノム解析を行った。
その結果、22の新規座位を含む32の脳卒中に影響する座位を同定した。22の新規座位には、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞、ラクナ梗塞の三つの亜型に関連する座位も含まれていた。
同定した32座位を詳しく観察すると、心房細動、虚血性心疾患、静脈塞栓症の遺伝子、さらに脳卒中の危険因子である高血圧や脂質異常症(高コレステロール血症)関連の遺伝子も含まれていた。
これは、これらの疾患や危険因子が、部分的に同じ遺伝子を経由して脳卒中の発症メカニズムに寄与していることを示しているという。また、同定した座位に含まれる脳卒中に関連する遺伝子群と既存の治療薬の標的遺伝子とを照合するゲノム創薬解析の結果、脳卒中に関連する遺伝子群は、脳卒中患者の急性期治療や脳梗塞の予防治療に用いられる治療薬と、特に強い結びつきを持つことを明らかにした。
研究グループによると、今回の成果は、今後のオーダーメイド医療の実現につながる礎を築くものであり、同定した薬剤ターゲット候補は今後、直接的な治療につながると期待できると説明する。