教室内、生徒の活動をデジタルに見える化する授業はじまる

さまざまな分野でデジタルトランスフォーメーションが進む。近年、そのイメージのみが先行し、「情報技術(IT)の浸透が人々の生活をより良い方向に変化させる」概念の、より具体的な適用例を欲してはいないだろうか。

教育の現場では、生徒が自らの考えを積極的に発信するアクティブラーニングの一環として、グループで課題に取り組む協働学習が取り入れられつつある。この授業では最終結果に至ったプロセスも重要な良否判定の基準となるが、紙と鉛筆、黒板などを使っている現在、成果物ができるまでの流れの把握が難しい状況だという。

東京大学と東大附属、富士通、富士通研究所は、富士通研究所が開発した部屋全体をデジタル化する空間UI技術(動画:YouTube)を用いて、アクティブラーニングにおける生徒の活動の見える化を行う共同実証実験を、東大附属の授業で約1年間実施すると発表した。

空間UI技術は、壁や机などの共有スペースを丸ごとインタラクションスペースとして構成し、スマートデバイスからの持ち込み資料や、デジタル付箋に書いたメモを大画面で共有することで、参加者が顔をあげて議論できる技術――。

今回の実証実験では、上記スペース中の活動データを可視化する技術を新開発し、グループ活動におけるコミュニケーションの流れを、スマートデバイスからの情報共有やデジタル付箋の作成、操作、その際の人の動きなどから時系列に取得する。教員は、生徒一人ひとりの活動状況から、最終結果に至ったプロセスまでを把握することができ、授業の振り返りを行うことができるという。

東京大学と東大附属は、この実証実験を通じ、協働学習の新たな手法を開発し、教育の質向上を推進していく。一方、富士通グループは、取得した活動データなどを分析することで、コミュニケーションを活性化させる現場改善技術を開発し、教育現場や業務シーンなどに広く使えるサービスを提供していく考えだ。