情報社会が急速に進展し、あらゆるモノがデジタル化(デジタルトランスフォーメーション)しつつある今、顔や指紋など生体情報を活用して本人を確認する技術「バイオメトリクス認証」は、セキュリティ分野での利用が拡大している。
そのなかでも、耳を使った耳音響認証は、常時および継続的に認証することで、ユーザのすり替り防止に活用できる。ハンズフリーで認証できるので作業中でも継続して本人の確認が可能。だが従来のそれは、常時認証において、人間の耳に聞こえる音(可聴音)が作業や思考の妨げになる。周囲の音が聞き取れないとか、ユーザに不快感を与えるなどの課題もあったという。
NECは、長岡工業高等専門学校の協力により、耳穴の形状の個人差を音で測定する独自のバイオメトリクス「耳音響認証」を強化。非可聴音で個人を認証する技術を開発したときょう発表した。マイク一体型イヤホンから送出する高周波(18~48 kHz)の非可聴音により、耳穴の形状を表す音響特性を正確かつ安定的に測定可能にしたという。
新技術は、ノイズを低減して本来の外耳道の音響特性を強調する「短時間同期加算法」、隣接周波数をまとめた上で音響特性を平滑化してノイズの影響をさらに低減する「対数フィルタバンク法」といった新開発の手法によって、高周波の音響特性の正確・安定測定を実現した。イヤホンについても今回、マイクやスピーカーの形状や配置、構造などを工夫し、高周波の反射音を効率的に取得できる設計とした。
重要インフラ施設の保守・管理や警備などでの安全・安心に関わる業務でのなりすまし防止や、医療現場やコールセンターなどでのハンズフリー認証による業務効率化、さらに人々の生活に密着したスマートイヤホン領域などへの応用を視野に、'18年度実用化を目指す。NECと長岡工業高専は、このたびの成果を来月13日、「日本音響学会2018年春季研究発表会」にて披露する予定だ。