光子の撮像時間を1/100にする、多画素検出器向け回路を実現

極低温下で電気抵抗がゼロになる、超伝導体で構成されている。超伝導検出器は、低周波磁界、ミリ波~X線・ガンマ線の電磁波やエネルギー粒子を低雑音で検出できる。そのため、脳磁計、心磁計、分析電子顕微鏡、天文観測用受信器などで用いられている。

がしかし、室温で動作する半導体検出器などと比べると、それは受光面積が2~3桁小さく、入射信号の検出効率が2~3桁低い。ゆえに少数の画素を走査しながらの撮像となり、測定時間が2桁ほど長くなる。問題を解決するには検出器の多画素化を要するが、高速信号をリアルタイムに読出せるよう、極低温に置かれた多画素検出器と室温の信号処理装置を並列接続すれば、増やした配線経由の流入熱が増える。

熱の問題解決には極低温冷凍機の強化を要し、検出器システムの大型化により消費電力が増加、価格も上昇する。極低温下で、複数の画素信号を画素ごとに異なる周波数に変換し多重化して、配線数を減らす超伝導周波数多重読出回路も研究されてきたが、従来の技術では1本あたり1000以上の多画素化は困難であったという。

産総研ナノエレクトロニクス研究部門の研究グループは、東京大学大学院の教授らと共同で、1本の読出線上に従来の5倍となる1000画素以上の信号を載せられる技術を開発した。新規の多重読出回路では、これまでの制約――超伝導検出器からの低周波出力を雑音処理が容易なマイクロ波帯へ一旦上げて、その後、室温処理装置での処理のために戻す――を無くし、各周波数帯域用の室温処理装置を複数並列化することで、全ての画素からの信号を1本の読出線で扱えるようになったという。

今回開発した読出回路は、市販半導体検出器と同等の受光面積が可能となり、同一測定時間での比較で、遥かに優れた分光性能が実現できる。たとえば、産総研が昨春発表した「光子顕微鏡」に適用できれば、撮像時間が1/100に短縮する可能性があるとのことだ。