卵巣癌の個別化医療実現への新発見、東北大学

卵巣癌は病状が進行してから発見されることが多いため、悪性腫瘍の中で最も治療後の経過(予後)が悪い癌の一つ。異なる性質の卵巣癌に対して同じ治療が行われることも予後が悪い理由であると考えられる。そのため、腫瘍の性質に合った個別化医療を実現する必要がある。

東北大学大学院医学系研究科婦人科学分野の豊島 将文講師、八重樫 伸生教授、同大東北メディカル・メガバンク機構地域医療支援部門の北谷 和之講師らのグループは、癌遺伝子の一つとして知られる「c-Myc」を指標に、c-Myc高発現型卵巣癌と合成致死を示す治療標的分子として「Furin」を世界で初めて同定した。c-Myc高発現型卵巣癌に対してFurinは新しい有望な治療標的となり、卵巣癌の個別化医療への実現につながると考えられるという。研究成果は『Oncotarget』誌に掲載された。

研究グループは合成致死という概念に注目し、c-Mycの発現が高い型の卵巣癌に効果が高い治療標的を探索。c-Myc高発現型と低発現型の卵巣癌細胞株を用いて、6550遺伝子を標的とした大規模遺伝子抑制スクリーニングを行った結果、c-Myc高発現型卵巣癌と合成致死を示す標的分子として、Furinというタンパク質を同定した。

Furinは特定のタンパク質(プロタンパク質)を切断する酵素(プロタンパク転換酵素)で、プロタンパク質を不活性型から活性型へ変化させる。c-Myc高発現型卵巣癌でFurinの機能を阻害すると細胞増殖が抑制され、また、c-MycとFurinの発現量がどちらも高いと卵巣癌の細胞増殖がより促進されることも発見した。さらに、Furinの切断標的である「Notch1」というタンパク質が、細胞増殖におけるc-MycとFurinの協調的な働きに関係することが示された。

今回の研究成果は、卵巣癌の個別化医療の実現につながる可能性があり、さらに卵巣癌の予後の改善に貢献することが期待される。