統合失調症の社会機能障害に視床の体積異常が関与

日本医療研究開発機構(AMED)は、磁気共鳴画像法(MRI)を用いた研究により、統合失調症において、大脳皮質下領域に存在する視床の体積が健常者に比べて小さいという既知の報告を再現する。

東京大学大学院医学系研究科精神医学分野の越山太輔大学院生、笠井清登教授、大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太准教授らの研究グループが成功。

統合失調症は生涯に約100人に1人が発症する精神疾患。思春期や青年期に発症することが多く、幻聴や妄想、意欲の低下や気分の落ち込み、認知機能の障害などがみられる。また社会的機能の低下を生じ、働くことが困難となるケースも多い。統合失調症において認知・社会機能障害は日々の生活に大きな支障をきたすが、その病態は未だに明らかになっていない。

今回、研究グループでは、統合失調症における認知・社会機能障害と大脳皮質下体積との関連を網羅的に観察する研究を行った。参加者は統合失調症患者163人と健常者620人。構造MRI画像を用いて「FreeSurfer」という解析ツールにより大脳皮質下領域である海馬、側坐核、視床、扁桃体、尾状核、被殻、淡蒼球の左右それぞれ14部位の体積を算出。そこから得られた体積値と、年齢や性別、頭蓋内容積、MRI機種により影響を受ける体積の差を取り、補正後体積を算出した。

統合失調症における両側の海馬、扁桃体、視床、側坐核の補正後体積値は健常者と比べて有意に低下していた。また、統合失調症における右側の尾状核、両側の被殻、両側の淡蒼球の補正後体積値は健常者と比べて有意に上昇していたという。

研究グループによると、研究の結果は統合失調症を持つ当事者にとって社会生活の支障となっている社会認知機能(社会通念や文脈の理解)や日常生活技能(金銭出納やコミュニケーション能力)の障害の基盤として、視床を中心とする神経回路の機能不全が重要であることを示した初めての報告だという。また、統合失調症の病態解明の一助となるとともに、統合失調症の社会生活機能リハビリテーション法の開発に貢献すると考えられると説明する。