新たなビジネス価値を創出するために近年、OT(運用技術)とIT(情報技術)の融合が進んでいて、その鍵となるセンサーには高い性能が求められている。たとえば石油や天然ガスの探査では、地表で人工的に地震を起こし、地中からの微小な反射波を検出――
これには自動車などに搭載されている加速度センサーよりも1000倍以上の高感度を要する。さらに次世代の資源探査では100万台規模で地表にセンサーを設置。橋梁や建造物などの異常監視ではセンサーの保守性を高めるため、電池駆動年数を延ばす必要があり、消費電力の大幅な削減が求められているという。
日立製作所は、MEMS(微小電気機械システム)技術と回路技術を高度に融合することで、地盤や構造物からの微小振動を高感度かつ低消費電力で検出できるMEMS加速度センサーを開発したことを発表。資源探査などに用いられている加速度センサーと同等の高感度(ノイズレベル30ng/√Hz)を、従来の半分以下の消費電力(20mW)で実現するとした。
今回開発したMEMS加速度センサーは、弱いばねで保持され可動する錘と、錘の動きを検出して制御する回路とで構成されている。振動(加速度)による錘の動きの変化を電荷として検出し、錘を静止状態になるように制御する――このとき、錘表面の空気ノイズが高感度化の妨げとなっていた従来の課題を流体解析によって解決。絶縁薄膜をシリコンで挟んだSOI基板で構成された錘全面に入口と出口で径の異なる貫通孔を形成して、空気抵抗を約半分に低減したという。
錘の動きの制御と検出を並行動作させる独自方式により低電力化を実現する回路技術も備えた。今回の開発成果の一部を、今週英国で開催の「MEMS 2018」にて発表する。日立は今後、同センサーを次世代の資源探査やインフラモニタリングなど、高感度かつ低消費電力での振動計測が求められるアプリケーションに適用していく構えだ。