ニューロンの位置を決定する、脳内のしくみを解明!

神経系を構成する細胞、ニューロンは刺激を受けて静止状態から活動状態に入る。即ち興奮し、あるいはその刺激を他の細胞に伝達する。樹状突起と軸索という2種類のものが核を有する細胞体から伸びている。

その誕生と成長過程――。脳内の神経幹細胞から生まれたニューロンは、目的地まで長い距離を未熟な形態を保ったまま移動する。目的地付近で徐々に移動を停止し、樹状の突起を複雑に伸ばしながら成熟したニューロンになる。移動を停止した脳内の位置によって異種のニューロンへと成熟し、異なる脳機能を担う。このことから、ニューロンの移動停止プロセスを調節するしくみは、脳の形成および機能発現に極めて重要だと考えられている。

ニューロンが目的地まで移動を維持するしくみについてはよく調べられてきた。しかし移動を停止するしくみは、これまでよく分かっていなかったという。名古屋市立大学大学院医学研究科の教授らは、同大学院薬学研究科、生理学研究所、自治医科大学、米国シンシナティ子供病院の研究者と共同で、脳内を移動するニューロンが正しい位置で停止して成熟する新しいメカニズムを解明したことを公表した。

マウスを用いた実験によって、ニューロンが目的地に近づいて移動を停止するとき特殊な突起(FLP)を伸ばすことを見出した。ニューロンの移動中、PlexinD1という周囲の情報を受け取る蛋白質のはたらきによって、FLPの形成が抑制されている。この蛋白質のはたらきが弱まると突起が形成され、移動を停止させることが分かった。停止のしくみによってニューロンを脳内に正しく配置することが、脳の機能に重要であることも示した。

脳梗塞などの脳疾患で失われたニューロンを再生させる方法の開発や、ニューロンの移動の異常によって生じる病気の研究に役立つだろう。今回の研究成果は、欧州科学誌「The EMBO Journal」電子版に掲載された。