固体―液体界面での水分子分布を直接可視化、京都大学
山田啓文 工学研究科教授、小林圭 同准教授、梅田健一 同研究員(現・日本学術振興会特別研究員(東京大学))、Adam Foster フィンランド・Aalto大学教授らの研究グループの成功。研究成果は、英国の科学誌『Nature Communications』に掲載された。
液体と固体が接する固液界面は、結晶成長や触媒反応といった現象が生起する特徴的な場所。生物の体内でも分子の特異結合・吸着といった種々の生化学過程を引き起こす場として極めて重要な役割を担っている。
例えば、電池の電極反応は、固体の電極と液体の電解質が接する界面である固液電極界面に形成される電気二重層内で進む。また、生体適合性材料の表面にタンパク質がどのように吸着し影響を受けるかは、材料とタンパク質の界面に形成される水和殻/水和構造に強く関連している。
このように極めて広範な研究分野において、固体―液体界面での帯電状態と水和構造やイオン吸着との関係を理解することが、表面化学反応や生体機能発現の分子レベル的理解へと直接つながると考えられている。しかし、これまでの実験・理論のどちらの面においても十分な理解は得られていなかった。
研究グループは、「クリノクロア」と呼ばれる層状ケイ酸塩鉱物結晶の一種と水溶液との境界に着目。この結晶は正電荷を持つ酸素八面体層と、負電荷を持つケイ酸塩四面体層が交互に積層した特徴的な構造を取る。そのため、異なる電荷を持つ表面における水分子の分布の違いを可視化するのに適したモデル試料だという。
本研究では、原子間力顕微鏡(AFM)による3次元フォースマップ法(観察したい領域の表面上の全ての3次元空間で、AFM探針にはたらく力を探針振動の周波数の変化として捉え、試料表面上の相互作用力の3次元分布を求める手法)を用い、クリノクロア表面の水和構造可視化に成功した。
研究グループによると、界面の水和構造とそれと同時に作用する電気二重層力を分子レベルで可視化する新たな手法を確立。今後、固液界面における物理・化学現象を利用した種々のデバイスの開発や、生体分子の機能解明を理論的、実験的に進めていく予定だという。