有機EL・抗菌等にも機能する、曲がるタッチパネル誕生

いま身のまわりにタッチパネルがどれほどあるだろうか。スマートフォンやタブレット端末、駅や空港などの券売機、回転寿司や居酒屋等の注文ディスプレイ、企業などの受付システムに、医療機関のモニタ類、イベント会場のデジタルサイネージやVR/AR等々――

情報化の進展と共に、様々な場所、時間、状況において情報へのアクセスが必要になっていて、ディスプレイと一体になったそれは、小型のものから大型のものまで多数利用されている。3次元曲面や曲がるディスプレイが発表されていて、これらに対応できるタッチセンサが求められている。現在、主流の静電容量方式タッチパネルでは、電気抵抗値が高く、曲げに弱いITO(インジウム-スズ酸化物)がセンサ電極に使用されていて、大型化や曲面化ができない問題があった。

電極にメタルメッシュ(MM)を用いれば良いのだが、これはスマホなどで不可視化するための4μm以下の細線化が難しく、印刷によって製造する技術もなかったという。JSTは、産総研フレキシブルエレクトロニクス研究センターの研究成果をもとに、田中貴金属工業に委託して同社新事業カンパニーにて企業化開発を進めていた「金属細線を用いたタッチパネル用センサフィルム」の開発成果を認定。世界初となる、銀ナノインクを用いた全工程ロールtoロール方式の印刷で、ほぼ不可視な極細線MMセンサフィルムを廉価製造するシステムを構築したと、TANAKAホールディングスと公表した。

撥液性のフッ素樹脂が塗布されたフィルムにフォトマスクを介してパターン露光し、そこに金属インクを挿引することで配線を形成する。新たな印刷技術により、曲がるディスプレイ等でもタッチパネル機能が適用される。20万回の折り曲げ試験もクリアした今回発表のフレキシブルなMMフィルムは、有機ELディスプレイへも展開可能であり、抗菌・触媒・遮熱など機能フィルムへの利用も期待される。