神戸ポーアイは水素によって

より簡単に開発できるために新興国がコミットし、異業種からの参入も多い電気自動車。だが走っても走っても水しか排出しない燃料電池車のほうが環境面でも優れている、と一部先進国ではFCVを見直す動きがある。

水素はこの惑星に遍在している。宇宙一豊富な資源だ。そのため車の燃料としてだけでなく、発電そのものに活かそうとする計画がある。

日本では経産省が水素の利用、輸送・貯蔵、製造に関するロードマップを示していて、その行政の一翼を担い、エネルギー・地球環境問題の解決と産業技術力の強化に取り組んでいるNEDOはきょう、同機関の研究開発事業において大林組と川崎重工業が世界で初めて、市街地で水素による熱と電気を供給するシステムの実証試験を開始すると発表した。

両社が今月10日に完成させた実証プラントは、'81年の竣工時に「21世紀の海上都市」といわれ今も市民らから「ポーアイ」と親しみを込めて呼ばれる、神戸ポートアイランド――神戸空港の北に位置し、港湾施設、高層住宅、複数の大学キャンパス、スパコン「京」をはじめとする様々な研究施設やバイオ・医療関連企業などを多数抱える人工島に設けられた。

中央市民病院や国際展示場、水泳プールと国際的なスケートリンク等を備えたスポーツセンターもあり、7千人以上が暮らす。地域での実験では、1MW級「水素コジェネレーションシステム」から発生させた熱や電気を、前記公共施設に下水処理場を加えた4施設に供給し、地域コミュニティ内エネルギー最適制御システムの運用を検証する。

水素CGSは専焼も混焼も可能であり、その燃焼安定性や運用性を確認する。「水素」と「天然ガス」、コミュニティで利用する「熱」と「電気」の管理を、経済性や環境性の観点から「統合型エネルギーマネジメントシステム」にて検証する。両社は、各設備や機器の試運転などを経て、2月上旬より近隣施設へ熱と電気の試験供給を始める構えだ。