ラッシュアワーは世界中にある。日本のそれは主に電車で経験される。電車なら、混雑していても目的地に向かって進んでいるのでまだましな方である。だが、道路上の混雑はより重大であり、海外の大都市ではこちらの方が多い。
ロシアは国全体の近代化を目指し、様々なインフラ投資計画を打ち出している。なかでも、首都のモスクワ市は、欧州最大の都市として成長を続けているが、市内の慢性的な交通渋滞は極めて深刻な問題であり、ロシアの経済活動を阻害する大きな原因の一つと考えている。ために現在、交通ソリューションの刷新を図ろうとしているという。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、京三製作所、野村総合研究所は、モスクワ市交通管制センター(TsODD)と共同で実施していた高度交通信号システムの実証事業を完了。モスクワの深刻な交通渋滞の解決に向けて、市内5カ所の連続する交差点に同システムを設置し、車の移動時間の短縮効果の検証を行った結果、混雑時間帯で最大40%の渋滞緩和効果を確認したと、きょう発表した。
ギリシャ神話でゼウスの子にして多産と家畜の守護神であり、月と狩猟の女神「アルテミス」の名を冠したのだろう。システムは、信号制御機、車両感知器、通信ネットワークで構成されていて、管制センターで信号機をコントロールする一般的な方式とは異なり、コントローラ間でリアルタイムに交通情報や信号機制御情報を交換。交差点への流入量を予測し、"信号待ち時間が最小"になるように信号サイクルを自律的に制御する。大規模な中央管理システム要らずで、初期導入コストを抑えられるという。
今回の成果により、車の燃料消費低減によるCO2排出量削減と、移動時間短縮による経済活動の活性化への貢献が期待できる。また同実証事業で得られた結果をもとに、今後、ロシアの他の地域への高度交通信号システム「ARTEMIS」の展開を目指す構えだ。