理研、植物二次代謝産物の生合成遺伝子の推定の簡便化に成功

理化学研究所(理研)は、複数の植物ゲノムデータを統合させた情報解析を利用して、二次代謝産物の生合成に関わる遺伝子群を推定する手法を開発したことを発表した。コピー遺伝子が二次代謝産物の多様性を促進することを明らかにした。

理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター機能開発研究グループの花田耕介研究員(研究当時、現九州工業大学情報工学研究院准教授)、九州工業大学情報工学研究院の白井一正研究職員らの共同研究グループらが開発。

代謝産物のうち、生物体を構成維持する上で必要な物質を一次代謝産物、生育において必ずしも必須ではない物質を二次代謝産物という。

共同研究グループは、大量の二次代謝産物の生合成に関わる遺伝子群を網羅的に、かつ高精度に推定する簡便な情報解析手法を新たに開発した。この手法は「①網羅的な二次代謝産物を同定するメタボローム」「②全遺伝子の発現を調べるトランスクリプトーム」「③同一種内の塩基多様性を利用した一塩基多型(SNP)情報」を統合させることで、二次代謝産物の生成量に関わるゲノムの位置および発現量を網羅的に調べるもの。

この手法を用い、共同研究グループはモデル植物であるシロイヌナズナが生み出す1,335種の二次代謝産物の生合成に関わる遺伝子を5,654個推定することに成功。これらの遺伝子のコピー数に着目すると、予測よりも多い遺伝子にコピー数多型があることを明らかにした。このコピー数多型がある遺伝子(コピー遺伝子)の周辺では、適応進化に強く関わる遺伝子に特有の塩基多様度の著しい減少が観測された。

共同研究グループによると、植物は遺伝子のコピー数の違いによって個体ごとに二次代謝産物の生合成を変化させることで、適応進化するようなメカニズムを持つことが示されたという。コピー遺伝子が植物の二次代謝産物の多様性に大きく貢献していることが分かったと説明する。

今後、これらの成果を活用し、植物の二次代謝産物の生合成を制御することで、二次代謝産物をより効率的に生産できるものと期待できるという。研究成果は、英国の科学雑誌「Molecular Biology and Evolution」電子版に掲載された。