藻類バイオ燃料開発などに有望な新技術を開発

科学技術振興機構(JST)は、マイクロ流体中の慣性力を利用することで、細胞を形状ごとに自律的に分類するマイクロ流体デバイスの開発に成功したと発表した。

今回の研究では、慣性力を利用したマイクロ流体技術を応用して、連続的にミドリムシを細胞外形のアスペクト比ごとに分離する技術を確立。精密加工された流路に細胞を流すと、アスペクト比が高い(細胞の幅に対する長さの割合が大きい)細胞はアスペクト比が低い細胞と比較して、より流路中央に近い位置を流れることを発見した。

この現象を利用して、流路の位置ごとに異なる流路に誘導する分岐流路を組み合わせることで、細胞をアスペクト比ごとに分離することを可能にした。マイクロ流体チップは、直線上の流路および断面が徐々に広がった形状の流路および出口流路で構成されている。

研究チームによると、ミドリムシなどの藻類を用いた生物学的研究や産業応用などに対して大きなインパクトを与えるという。ミドリムシにおけるアスペクト比などの形状は、概日リズムや細胞周期などの生物学的要因、光合成や呼吸など代謝活動の要因、温度や光、pH、イオン濃度など外部環境要因などに作用される生物学的に重要なバイオマーカー(生体内の生物学的変化を定量的に把握するため、生体情報を数値化・定量化した指標)となる。

これを指標としてより均一な細胞集団を分離することができる技術は、培養条件の制御や育種、遺伝子改変などの技術を組み合わせることで、オイル生産性が高い藻類の開発などに役立つことが期待される。

カリフォルニア大学 ロサンゼルス校のMing Li博士研究員、Dino Di Carlo教授、東京大学 大学院理学系研究科化学専攻の合田 圭介教授らの研究グループが成功。内閣府 総合科学技術・イノベーション会議の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)のうち、合田がプログラムマネージャーを務める研究開発プログラム「セレンディピティの計画的創出による新価値創造」の一環として実施された。研究成果は、2017年9月7日に科学誌「Scientific Reports」電子版で公開された。