産総研、スピントロニクスを用いた人工ニューロンを開発

国立研究開発法人 産業技術総合研究所は、フランスのパリ・サクレー大学、アメリカ国立標準研究所(NIST)と共同で、スピントルク発振素子(以下、STO)を用いた人工ニューロンを考案し、その原理を実証したと発表した。

産総研のスピントロニクス研究センター 金属スピントロニクスチーム 常木澄人研究員、薬師寺 啓研究チーム長、同研究センター 久保田 均総括研究主幹、福島章雄副研究センター長らの研究グループが成功。成果の詳細は、英国の学術誌「Nature」電子版で公開された。

ヒトの脳でのニューロンとシナプスによる情報処理を模倣した「ニューロモロフィック・コンピューティング」は、脳が得意とする認識や学習といった膨大で曖昧、不完全な情報の処理を低消費電力で高速に実行できると期待されている。

今回、研究グループは、STOが持つ「緩和時間」と「非線形性」の特徴がニューロモロフィック・システムで必要とされる短時間記憶や信号の非線形性として活用できると考え、STOを用いた高効率・超小型の人工ニューロンを考案した。

また、ナノメートルサイズのSTOを人工ニューロンとして用いたニューロモロフィック回路音声認識システムを開発。ナノメートルサイズの人工ニューロンを用いた音声認識は世界初で、このシステムは人間が発声した「0」~「9」の言葉を99.6%の正答率で認識できたという。

産総研によると、より大型で複雑な光学系リザーバコンピューターと同等の正答率とのこと。人工ニューロンに新たに人工シナプスを接続した高度なニューロモロフィック・システムを開発し、ビッグデータのリアルタイム情報処理の実現を目指す。