今回開発した通信機能付き薬箱は、患者と処方薬とを個別に紐づけたICタグ薬包を自動で読み込むことで服薬状況を管理する。家庭や療養・介護施設向けでの活用が期待される製品。凸版印刷によると、服薬履歴や残薬量をクラウドで管理することで、患者と医療従事者双方の負荷軽減や遠隔地からの見守りサービスとしての有効性が期待できるという。
開発に当たっては、凸版印刷がICタグ薬包と通信機能付き薬箱の開発を、デンソーウェーブが通信機能付き薬箱に組み込む、複数のICタグを一括読み取りできる920MHz帯RFID読み取り技術を提供した。
また、同製品の有効性を検証する実証実験を2017年6月27日~7月4日まで実施した。その結果、高い「飲み忘れ」防止効果や「残薬の見える化」による薬剤管理の精度向上効果が確認され、その有効性が実証されたと説明する。凸版印刷によると、iPadとCareKitを組み合わせた服薬管理システムは、日本国内で初めての実装となるという。
実証実験は、薬剤師を含む全国の一般生活者モニター8人を対象に実施。被験者宅にICタグ薬包と通信機能付き薬箱を設置し、通信機能付き薬箱が箱内に収められたICタグ薬包を常時読み取り、CareKitを用いてその内容や数量をクラウドに送信する。設定時刻になると服薬時刻を知らせるアラートが接続したiPadから発信される。クラウド上の服薬状況(箱から取り出された履歴)や残薬量などのデータは医師を含む第三者がモニタリングや過去の服薬履歴の閲覧などを行った。
その結果、実証期間中の全体の服薬率は95%、その内アラート音や画面表示によって飲み忘れを防止した回数が全体の21%になった。また、家庭の残薬量、過去の服薬履歴を把握し、かかりつけ薬剤師の在宅訪問薬剤管理に対する負荷軽減といった有効性を確認したという。