昨今、内閣府中央防災会議などの政府機関において、今後30年以内に70%以上の確率で南海トラフ巨大地震(南海・東南海・東海)や首都直下型地震などの大規模地震が発生すると想定されており、地震における防災対策のあり方が活発に議論されている。そのような議論の中で、地震学だけでなく、統計学や物理学を用いた地震先行現象研究が注目されつつある。
このような先行現象研究の一つとして、研究グループは、複数のGPS衛星観測局から地震発生前のデータのみを用いて電離圏電子数異常を捉えるデータ解析手法を開発し、東北地方太平洋沖地震や熊本地震の発生前においても電離圏の異常を捉えられることを理論づけ、1時間前から20分前の大規模(マグニチュード7以上)地震検知の可能性を示した。
研究グループとケイ・オプティコムは、この大規模地震の先行現象検出技術の確立のため、以下の共同研究に取り組む。
・GPS以外のデータを活用するなど解析手法を高度化し、電離圏異常との分析が未着手である過去大規模地震を解析することで、大規模地震と電離圏異常の相関関係を立証する。・ケイ・オプティコムの通信局舎および京都大学施設へ受信機を設置し、リアルタイムのGNSSデータ(GPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星などの衛星測位システムの総称)を解析することで、独自観測網の実現可能性を検証する。
・京都大学施設に電離圏における電子数などの状況を取得可能なイオノゾンデ受信機(斜入射観測装置)を設置することで、新たな観測手法が地震先行現象検出に資するかを検証する。
共同研究で得られたデータは、一定期間経過後に公開するなどして、第三者による本先行現象検出技術の効果を科学的に検証ができるようにする予定。
共同研究による検証・立証を経て、ケイ・オプティコムはクラウド基盤や通信網などのリソースを活用し、 自治体を介した地震先行現象情報の配信や、スマートフォンなどによる直接的な情報の通知などを担うことを目指す。今後、日本のみならず海外への展開も視野に入れながら、共同研究を含め情報通信技術を活用した地震における防災事業に取り組む。