スマートホームやコネクティッドカー(つながる車)は雲の上、すなわちクラウド上に存在するAIとの連携によって実現されるだろう。
あらゆるモノがインターネットにつながるIoT社会では、モノ(エッジ)のAIとクラウドのAIとが会話しつつ、人間の仕事や生活をサポートすると考えられる。いま、画像処理用半導体チップ(GPU)が脚光を浴びている。ゲーム機に組み込まれていて、その並列性から科学演算のスーパーコンピュータにも用いられているGPUは、日本ではもと秋葉原かつくば市の人々のみが知る存在だった。が、ネット上に動画が増え、スマートフォンが台頭し、機械学習プログラムが進化することによって、主役に躍り出ようとしているのだ。
つながる車の開発を目指している超大手自動車メーカーが、GPUベンダーと戦略的に提携したことは記憶に新しい。
パソコンや業務用コンピュータが常にそれを求められてきたように、AIも、実用範囲の広がりとともに、処理性能の向上が求められる。
現在、多くの人のポケットやバッグの中にあるエッジコンピュータ、スマートフォンも同様だ。いまはまだクラウド経由でユーザーにAIを体験させているけれど、スマホそのものがAI化する日も近い。そう思わせる発表が、世界人口の70%にその技術を届けている半導体設計の巨人、英ARM社でなされた。
人間の脳の一部機能をまねるだけで大量の処理資源を要する。クラウド中心のアプローチは、AIを偏在かつプライバシーを強固にしなければ短命に終わるだろう。事実、世界の85%の消費者がAIのセキュリティに不安を抱いている。そこで同社は、AIその他の人間ライクなモノでの体験を再設計。個人データの処理と保管をより多くエッジで行い、AIのプライバシー機能に大きな信頼を置けるよう、「DynamIQ™ technology」をベースに初のプロセッサー群と、新たなIPサポートを含む包括的開発ツール「ARM Compute Library」をリリースした。
今後3~5年、AIの性能を50倍超にする礎となるARM DynamIQテクノロジーは次世代の扉を開く。大量シングルスレッドでプレミアムパフォーマンスを実現する「ARM Cortex-A75」、世界一効率の良い汎用プロセッサー「ARM Cortex-A55」、 そして、仮想現実(VR)やゲーミング、機械学習(ML)をモバイルに展開できる「ARM Mali-G72 GPU」 は、従来比で40%高性能とのことだ。