不安は市民とメディアの過剰反応である気がしないでもない。けれど、企業からは、明確かつ一律の基準のない匿名加工に消極的といった声が聞こえてくる。「超スマート社会(Society5.0)」(引用、文部科学省ウェブ)の原動力たる産業界がそんな調子では、画餅どころかまたしても黒船プラットフォームに根こそぎ持って行かれる恐れが大だ――。と思っていたら、個人情報保護に最も敏感なライフサイエンス/ヘルスケア分野から、ベストプラクティス(最良な方式、先駆的方法)が届いた。
ソニー株式会社は、電子お薬手帳を基盤とした医療情報連携システム「harumo(ハルモ)」において、「医薬品に関する緊急安全性情報・安全性速報」に関する患者向け情報の無償配信サービスを今月より開始する。
厚生労働省より上記速報が発信された際に、対象となる薬が調剤された患者のみを抽出し、当該患者のスマートフォンに対して、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトに掲載された患者向けの該当情報を通知し、注意喚起を促すことを目的とする。このサービスは、一般社団法人 くすりの適正使用協議会「RAD-AR」の協力のもと、参画を希望する製薬企業47社(5月29日現在)の情報を配信するものだという。
harmoはソニー独自開発の情報分離技術を基礎とする、個人情報に配慮したクラウドシステムによりサービスを運営していて、患者氏名などの個人情報は専用のICカードやスマホアプリに、また調剤された薬剤情報などのデータはクラウドサーバーに、各々暗号化のうえ、分離して保存している。
そして、配信サービスは、個人情報を含まないクラウド上の情報から特定の条件を満たす利用者を抽出。利用者に直接情報の通知を行うものであり、情報通知者もソニーも、患者の名前や電話番号、メールアドレスなどの情報を取得することなく配信運用できることが大きな特長である。
今回発表のサービスにより、患者は自身が服用している薬に関する情報をタイムリーかつ正確に把握することができ、医療機関・薬局等に相談をする等の対応が迅速に取れるようになるとのことだ。