環境ガバナンス向上に向けたソフトプラットフォーム「Maritime Environmental Hub」

グローバリゼーションの影響はインターネットだけでなく、現実の地政学的な変化にも如実に表れている。

例えば海上におけるレギュレーションの複雑化は、その影響の一つと言えるだろう。テクノロジーの発達により多くの船舶が海上を往来し、様々な用途で海に繰り出すようになったことで、これまでのルールでは取り扱うことが難しいケースも増えてきているものだ。

また、海上のルールは国際法によってある程度定められてはいるものの、国ごとのルールの問題もあるため、一元化した決まりごとを常に守り続けることも難しいものである。

「Maritime Environmental Hub」はそんな複雑な海上の環境ガバナンスを向上するため誕生したプラットフォームで、統合データベースを構築し、海上活動に携わる全ての人々が地域ごとのレギュレーションを確認できるよう手助けしてくれるプロダクトだ。

環境ガバナンス向上に向けたソフトプラットフォーム「Maritime Environmental Hub」

グローバルな海上レギュレーションの必要性

世界には9000を超える船舶業者が存在時しているとされており、世界中の航行を前提として活動している。しかしながら彼らは同業でありながら充実した共通のデータベースやレギュレーションを有しておらず、船上で発生したゴミや排泄物はそのまま海洋に投棄されてしまうケースも多い。

陸から海への海洋投棄はこれまでも各国で対策が練られてきたものの、国と国の間にある公海などではルールの適用があいまいとなるため、海洋投棄による汚染が進行してしまうのである。

これが少数であればまだ自然がゴミを分解してくれる効果も見込めるが、グローバル化によって多くの船舶が往来し、投棄されるゴミの量も増加傾向にある。

こういった海洋投棄の問題は、それが発覚した場合、企業は政府から多額の罰金を支払うことになるだけでなく、企業コンプライアンスの側面からも心証が悪くなり、国際社会での孤立も招いてしまうのである。

そのために策定が進んでいるのが、グローバルでどの船舶にも適用される国際ポリシーの存在だ。各国のレギュレーションとそぐわないような独自の船舶に関するポリシーを制定することで、なおかつ全ての船舶に共有されることが必要となる。

船舶向けソフトのECAPとそれを支えるプラットフォームのMEH

The Environmental Compliance Assistance Platform、通称ECAPは全ての船舶に適用することを目的として開発されたソフトで、ナビゲーションブリッジにインストールされ、船舶の環境オペレーションの計画をサポートし、なおかつ監視することを目的とする。

ナビゲーションチャートを用い、レギュレーション適用エリアにおける船舶の位置を割り出すのがECAPの主な機能だ。通常のオペレーションにおける距離測定機能やアラート機能もしっかりと活用することができるため、船舶のクルーにとっても良い働きをするのである。

そしてECAPを機能させるために必要なデータベースの拡充に不可欠なのが、Maritime Environmental Hub、通称MEHというわけだ。MEHはポリシー策定者が制定したレギュレーション情報を提供するだけでなく、常にアップデートを繰り返すためにも必要なプラットフォームとして機能する。

利用はエンドユーザーに限らず、個人での使用にも範囲が広く設けられており、情報のアップデートや追記を行いやすいよう、盛んに活動ができるコミュニティとしての役割も大きい。

レギュレーションの改定や制定、あるいは撤廃の情報は、国際的なものであれば比較的共有される機会は多いものだが、各国の海上レギュレーションとなると外部向けにそのことがリアルタイムで発表されるケースは少ない。

そのため、Maritime Environmental Hubのような、インターナショナルで誰でも使えるプラットフォームを設けることで、常に世界中の船舶業者が最新の情報に触れることができ流ようになるというわけだ。

Maritime Environmental Hubは現在Kickstarterで出資者を募っており、10ドルの出資で個人的な利用が可能になるライセンスを購入可能だ。