世界最小サイズの天体観測カメラ「NANO1」
たとえば天体は普通のカメラで撮影を行うのは難しい被写体の一つだ。肉眼でははっきりと確認できても、そもそもカメラから被写体の距離があまりにも離れているため、カメラを通して写真に収めようとすると星はぼやけてしまい、なんとなくはっきりしない写真となってしまいがちだ。
そのため星や夜空を撮影するためには特別な天体撮影用のカメラが使われるのだが、今回開発された「NANO1」はそんな天体撮影を少しでも手軽に行えるよう、スマートフォン向けに生み出された、世界最小クラスの天体撮影用カメラレンズとなっている。
小型化とコストパフォーマンスの向上に成功したカメラ
通常の天体観測用のカメラといえば、大型の一眼レフに高度なレンズを装着し、その上でさらにカメラを固定するためのトライポッドなどが必要になるというのが当たり前であった。
そのため天体の写真撮影は高度な技術と高額な設備投資を要するため、カメラの性能が飛躍的に向上した現代であっても素人が撮影するにはややハードルが高かったのである。
しかしNANO1の場合、一台当たりのサイズはこれまでのカメラやレンズに比べてはるかに小さなものとなっており、本体は手のひらに収まるほどのものに仕上がっている。必要とあれば適当なポケットに納めて持ち歩くことができるため、準備に大きな手間がかかる心配がない。
天体の写真を撮影する場合、どれだけカメラの性能が優れていても、ある程度山奥に行くなど、人工の光が周りに存在しない場所へ移動する必要がある。肉眼でも綺麗に見えるほどでなかれば、天体写真を撮影することは不可能なのだ。
そして人工の光が少ない場所というのは、決まって移動が大変な場所にあることが多い。海岸沿いや山奥、人里離れた田舎など、普段生活しているエリアから遠く離れてしまうため、重い機材などを持ち運ぶのは大きな労力を要することになってしまいやすい。
そのため天体写真はある程度の身体的なタフネスが要求されることにもなるのだが、NANO1であれば老若男女を問わず持ち運ぶことができ、誰でも簡単に扱うことが可能となるため、より多くの人に天体写真撮影を楽しんでもらうことができるようになるはずだ。
スマートフォンならではの多機能性も充実
二つ目に写真撮影を行う上で重要なのが、観測のためのポジショニングである。夜空の写真撮影に慣れていない初心者の場合、どこにカメラをセットしてどのような角度で撮影を行えばよいかというところで手間取ってしまいやすい。
夜空もまた自然物となるため、その時々によって撮るべきポジションも変わってくるものだが、NANO1は拡張現実(AR)を駆使して撮影者にあらかじめその角度から撮影が可能と推測される星々をビジュアルで表示してくれるのである。
カメラを向けた方向にスマートフォン上でバーチャルの天体が表示されるので、たとえバーチャル通りに天体が見えないとしても、おおよその感覚をそのようなツールを用いることでつかむことができるようになるのは初心者にも嬉しいポイントの一つと言えるだろう。
あるいはNANO1に搭載されたオリジナルのノイズ除去技術も有効だ。夜間の撮影はそもそもの光量が少ないため写真にノイズが残りやすく、ピントは合っていても夜景だとノイズが目立っていまひとつ綺麗に見えないということも多い。
そのような悔しい思いをしないためにもノイズ除去技術は有効で、たとえ精度の高い鮮明な夜空の写真でも極力不自然にならないよう加工を施してくれる。
レンズ部分は取り替えが可能な換装システムを採用しており、状況に応じたレンズ交換を行うことができる。搭載可能なレンズはリリース後にも追加される予定で、別売りでの購入もできるようになるだろう。
また、スマートフォンと連携して活用できる天体カメラだということもあり、SNSとの連携も容易に行えるよう設計されている。撮影した画像をすぐに本体へ保存し、そのままFacebookやInstagram、あるいはメールなどで家族に撮影したてのものを送ることもできる。
一眼レフでも最近はネット回線さえあれば直接SNSに投稿できるものはあるが、やはり大半のカメラではSDカードからPC、そしてSNSという順序が必要になりがちだ。NANO1はスマホとSNS需要に応じたプロダクトとなっているのだ。
NANO1は現在Kickstarterで注文を受け付けており、一台当たり528ドルで購入することができる。発送は世界各国に対応しているので、日本からの注文も可能だ。