効率的でクリエイティブな編集を可能にするコンソールを提供するLoupedeck社(本社:フィンランド ヘルシンキ)は、次世代写真・動画編集コンソールの新製品を日本にて提供開始した。10月31日に開催された本新製品に関する記者発表会についてレポートする。
前世代のLoupedeckがAdobe Lightroomの業効率向上に特化した市場で唯一のデバイスであったのに対して、今回発表されたLoupedeck新製品は、Adobe Lightroomを含むその他複数の写真編集ソフトウェアを追加でサポートすると共に、新たに映像編集にも対応する。新製品の日本での提供開始に伴い、Loupedeckヘルシンキ本社のマーケティング担当責任者で共同設立者のFelix Hartwigsen氏が来日し、本新製品の詳細について、デモンストレーションを交えながら説明した。また実際に本新製品を利用した映像作家・監督の田所貴司氏と写真家の内田尚子氏をゲストに招き、トークセッションも行われた。
新製品Loupedeck+では、より多くの機能、制御、拡充されたカスタマイズオプションが提供される
前世代のLoupedeckがAdobe Lightroomの作業効率向上に特化した市場で唯一のデバイスであったのに対し、新製品Loupedeck+では、Adobe Lightroom Classic CCに加えて、人気の写真編集ソフトウェアSkylum Aurora HDRへの対応が可能になると共に、より多くの機能、制御、拡充されたカスタマイズオプションが提供される。さらに、Loupedeck+はAdobe Premiere Pro CCへの統合をサポートすることで、映像編集機能を新たに提供するものとなる。これにより、映像編集に携わるユーザーは、一段とスピーディかつ直感的な映像編集デバイスをこれまで以上にリーズナブルな価格で導入することができる。
Loupedeck+の提供を通じて、写真家がより快適で生産性の高い編集作業ができるよう全力で支援
発表会に登壇したLoupedeckのFelix Hartwigsen氏は冒頭、「こうして日本の皆様にも発表できることになり、本当に嬉しく思っています。Loupedeckは20人のプロの集団で構成されている会社です。ノキアやファーウェイ出身者が多く集まっています。インハウスで研究開発し、設計はヘルシンキ、製造はアジアで行っています。写真撮影もビデオ撮影も我々自身が大好きなことであり、だからこそ、私たちは、日本国内のプロとアマ両方の写真家コミュニティが、編集作業に対して多大な時間と労力をかけていることを認識しています。Loupedeck+の提供を通じて、写真家がより快適で生産性の高い編集作業ができるよう全力で支援していきます」と述べた。
第一世代のLoupedeckは2017年6月にアメリカで発売開始され、1年以内に2万台を出荷。その後、グローバルで展開したクラウドファンディングの資金調達によって成功を収め、フィンランドにあるLoupedeck本社で設計されたのが今回のLoupedeck+になる。アップデート機能はすべて、出資協力した写真コミュニティからのフィードバックを反映している。
またFelix Hartwigsen氏は「我々のミッションは、編集ワークフローの改善に継続して取り組むこと。映像編集の分野に機能を拡張するのは至極当然のことです。Loupedeck+をコミュニティからのフィードバックのみに基づいて開発したのと同様に、当社では、ユーザーの要望を反映することでデバイスの機能拡張を行うことが不可欠と考えていました。Loupedeck+では、写真家が指先一つで自由自在にコントロール可能な編集機能と高い操作性が、映像製作者向けに提供されます。ユーザーは、頼れるデバイスとしてLoupedeck+の直感的なデザインとユーザーフレンドリーなアプローチを利用し、映像編集の質を向上させ、生産性を改善することが可能になります。当社は、Adobeの継続的なパートナーシップを通じ、Premiere Pro CCスイートにおける新機能の導入を円滑に完了しました」と説明した。
Loupedeckは、その他のビデオソフトウェアへの対応を今年中に発表することも明かした。写真編集においては、今後Skylum LuminarなどSkylumのその他の製品との統合がLoupedeck+に追加される予定である。また、Loupedeck+は現在Capture Oneとベータ統合され、完全統合に向けた準備を進行中。今年中に新たな写真編集ソフトウェアの統合も計画されている。
続いて行われたトークセッションでは映像作家・監督の田所貴司氏と写真家の内田尚子氏が実際にLoupedeck+を利用した感想が述べられた。
マウスを離さなくて済むから作業スピードが上がります
Loupedeck+の第一印象について田所氏は「最初の印象はとても使いやすいという印象です。プリセットや慣れるのに時間がかかるものが多いなかで、その日のうちに仕事に使うことができました。普段、Premiereを使う際は基本、両手でキーボード、片手でマウスという使い方です。Loupedeck+を使ってみると、ベーシックな作業が左手のLoupedeck+と右手のマウスで済ませることができました。つまり、マウスを離さなくて済むから作業スピードが上がります」と話す。
無駄のない配置、北欧らしいシンプルさ
また内田氏は「箱を開けた時にその美しいデザインがとても気に入りました。無駄のない配置、北欧らしいシンプルさ。使ってみても、簡単に立ち上げることができることも魅力のひとつです」と率直な感想を述べた。また編集作業から生まれた付加価値について内田氏は「元のデータと比べることが難しい場合が多いのですが、Loupedeck+は初期設定に戻す作業が簡単にできます。写真を撮った時に感じたものを残しながら、編集することができるのが気に入ったポイントでした」と話した。
田所氏も付加価値があったことを説明した。「デバイスのなかでカラーグレーディングを行うことができ、効率が上がります。また自分の手元にパラメーターがみえているので、アウトプットしたいイメージがすぐ目の前に広がってくるのが大きなメリットですね。」
編集作業が楽しいと感じないユーザーも多い。Loupedeck+を利用すると、それは改善するのだろうか。
内田氏は「楽しくなったと断言できます」と話し、続けて「ダイヤル式なので値の変更がスムースにできます。時間を短縮して、作業効率を上げることができます。早く済んだ分、自分に今までできなかった大胆なエディティングにも挑戦することができました。自分の持っているものを伸ばしてくれるようで、使っていて楽しいです」と説明した。
Loupedeck+使用前
Loupedeck+使用後
また田所氏は「使いながら、チャレンジしたことがありました。カスタマイズができるので、実際に使われるプロモーションビデオを作成しました。インとアウトをカスタマイズし、2つのボタンを押しながらエディットすることができたのが楽しかったです。また編集しながらカラーグレーディングができるので、新しいワークフロースタイルを体験でき、エキサイティングできました」と述べた。
Loupedeck+の導入の検討についても田所氏は前向きな見解を述べた。「スタッフも興味を持っていましたので、実際に自分の会社でも活用していきたいと思っています」
また、トークセッションでは田所氏が映像監督として手掛けている女性アーチストのミュージックビデオ(OK BOYY【オーケーボーイ】、作詞・歌エリカ)のLoupedeck+スペシャルバージョンが披露された。
発表会では写真編集のデモンストレーションも行われ、ビギナーでもわかりやすいデバイスであることを証明した。日本のデジタルカメラの出荷台数は、ソーシャルメディア利用者の急増により7年ぶりに増加した。カメラ映像機器工業会(CIPA)が発表した統計によると、2017年の国内デジタルカメラ出荷売上は前年に比べ8.3%増加。デジタルカメラの需要増加は、インスタグラムやその他の写真投稿SNSの人気の高まりによるものとの見方が業界筋で広まっている。CIPAは発表の中で、より質の高い写真を撮って投稿したいと考えるスマートフォンユーザーが増えていることから、レンズ交換式高性能カメラの利用はさらに拡大すると述べている。
Loupedeck+へのアップグレードの具体的な内容は「より精度が高く丈夫なメカニカルキー」
「製造品質の改善」「2つのカスタマイズ可能な専用ダイヤルと17個のボタン」「すべてのダイヤルをユーザー制御できるカスタムモード」「写真編集作業における改善、高速化、安定性向上を目的に新たに開発されたコンフィギュレーションソフトウェア」が挙げられる。
新しい映像編集機能の装備は「よりスピーディかつ直感的に行えるビデオ編集およびカラー補正。カラーグレーディング用のすべての基本ツールは、コンソールに分かりやすくラベル表示」「Premiere Pro CCに対する完全な柔軟性を備え、編集者はワークフローに合わせて独自の設定が可能」「編集者個人のLoupedeckコンフィギュレーション設定をエクスポート/インポートして他のコンピュータに簡単に移植できる機能」「カラーグレーディング用Lumetri Colorワークスペースとの互換性」「大幅な時間節約に役立つ、好みのLUTを切り替える機能」「柔軟性のあるタイムラインナビゲーション、コンテンツトリミングおよびクリップ調整」「Adobe Premiereショートカットを希望に合わせてコンソールボタンのカスタマイズができるオプション、またはプリインストールされた機能を使用するオプション」となる。
Loupedeck+はAmazon.co.jpにて34,000円で購入可能。