百度(Baidu)が活用しているIntelの最新エッジコンピューティング技術
IntelとBaiduが提携した目的は、Baiduの提供している金融サービスやロジスティクス、ビデオストリーミングにおけるAI機能を強化するためだ。
以下では、BaiduとIntelが取り組んでいる最新エッジコンピューティング活用方法について解説していく。
ロジ分野ではIntelのOpenVINO Toolkitでリアルタイム接続を向上させる
Baiduは近年自動運転の分野にも進出しており、日々新しい技術開発に取り組んでいる。最近のニュースでは、2017年7月にSuning LogisticsとBaidu傘下のBaidu Apolloが戦略的パートナーシップを締結したことを発表した。Suning Logisticsは自動運転技術を開発している企業。Suning LogisticsとBaidu Apolloが協力することにより、自動運転が可能な商用車の量産化計画を一気に加速させる予定だ。早ければ2020年に商用化が実現すると報じられている。
Baiduは独自のクラウドサービスの「Baidu Cloud」を展開しており、このサービスではクラウドストレージやクライアントソフトウェア、ファイルマネジメントやリソースシェアリング、サード・パーティ・インテグレーションなど様々な機能を利用することができる。
Baiduはロジスティクス車ネットワークを利用して、前述のBaidu Cloudとエッジコンピューティングを介したリアルタイム接続を確立しようとしている。リアルタイム接続はトラックでの輸送の際に即座に異常をシステムに伝える目的で活用される予定だ。
例えばトラックに車載カメラが搭載されていても、貨物輸送中に際に何か問題があった場合にその内容の確認ができるのはトラックがベース地に戻ってきた時のみである。Baiduは何らかの異常が起きた際、即座に問題を検知し無線で中央システムに報告するためにIntelの「Open VINO Toolkit」と呼ばれるツールを活用している。
同社はOpenVINO Toolkitを搭載したカメラ機器をいくつかのトラックに導入することを発表しており、荷物を運搬しているトラックが事故により衝突したときの衝撃や、トラックから落下した荷物の在庫分析に用いられる。
Open VINO Toolkitの特徴
Open VINO Toolkitの特徴を一言で表すと、コンピュータ・ビジョンとAIを融合させたツールだ。人間の視覚に匹敵するアプリケーションとソリューションを提供しており、 コンボルーション・ニューラル・ネットワーク(CNN)に基づいて、このツールキットはインテルハードウェア全体のワークロードを拡張し、パフォーマンスを最大化する。
コンピュータビジョンやニューラルネットワークの推論、またディープラーニングの展開作業に関する作業や、CPU、GPU、VPU、およびFPGAを含む複数のプラットフォームでソリューションを高速化したいコンピュータ・サイエンティストやデータサイエンティスト向けに作られている。
モデル・オプティマイザーおよび推論エンジンを備えたインテル ディープラーニング・デプロイメント・ツールキット (インテル DL デプロイメント・ツールキット) OpenCV※1および OpenVX※2に最適化されている。
※1Open CVとはIntelが1999年に開発したオープンソースのコンピュータビジョンライブラリ。Open CVはC++やPython、Javaインターフェースや Windows, Linux, Mac OS, iOS,Androidなどをサポートしており、画像分析によく利用されている。また、Open CVはプログラムに従った方法を用いるか、もしくはニューラルネットワークを用いた分析にも利用することができる。
※2Open CVは非営利団体のコンソーシアムのKhronos(クロノス)が開発したオープンソースのコンピュータ・ビジョンアプリケーションのクロスプラットフォームアクセラレーションのためのツール。
BaiduとIntelは金融サービスでも提携
Baiduは金融サービスも提供しており、China Union Pay、AI Bank、Agricultural Bank of Chinaといった金融アプリがある。これらの金融サービスでは、処理能力を高めるためにIntelの「Intel Xeon Scalable processors」と「Intel Math Kernel Library-Deep Neural Network (Intel MKL-DNN)」が用いられている。
Baiduが金融サービスに用いているFinancial Cloudは、Intel Xeon ScalableプロセッサーおよびIntel MKL-DNNライブラリー上で実行され、金融サービスのパフォーマンスおよびセキュリティ要件を満たす役割を果たしている。
Baiduの動画配信サービス「iQiyu」でもIntelのOpen VINOを活用
BaiduはNetflixに似た動画配信サイトの「iQiyi(爱奇艺)」を運営している。
iQiyiでは動画サービスをより良くするために前述のOpen VINOツールキットを採用。コンテンツルール違反を侵しているビデオを検出し、既存のプラットフォームでパフォーマンスを改善し、Intel Xeon Scalableプロセッサを搭載したBaidu Cloudのパフォーマンスをさらに向上させることに貢献している。
Open Vino Toolkitの活用シーンは様々
Open Vino Toolkitは様々な業界で活用することができる。
IntelはAIを活用したビジョンアプリケーションの需要が今増加すると見て、大幅な成長を見込んでいる。同社の第1四半期のIoT事業は前年同期比17%増の8億4000万ドルの売上を達成している。
https://www.intc.com/investor-relations/investor-education-and-news/investor-news/press-release-details/2018/Intel-Reports-First-Quarter-2018-Financial-Results/
OpenVinoは小売、エネルギー、医療、産業など幅広い市場に適用が期待されており、AgentVi、Amazon Web Services、Dell、Honeywellなど多くの企業に活用されている。
まとめ
Baiduはロジスティクスから金融サービス、動画配信、SNS運営、自動運転にいたるまで幅広い分野で多角経営を行なっている。これらのサービスの質を向上させるためには、最新技術の活用が欠かせない。
今回のIntelとBaiduのパートナーシップについて、Intelの副社長であるRaejeanne Skillern氏は次のように語っている。「IntelはエンドツーエンドのAIソリューションを提供するためにBaidu Cloudと協力しています。最新のチップを適用することや単一のフレームワークを最適化することだけでは、新しいAIワークロードの要求に見合うことができません。求められているのはソフトウェア最適化を備えたシステムレベルの統合であり、私たちの顧客がAI目標に達成する名目の下にIntelはAI技術の専門知識と幅広いポートフォリオを通してこれを可能にします。」
どの業界でもAIやディープラーニング、またブロックチェーンの活用が広がってきているが、それらの技術を実際に導入できているところは一部の大企業だけである。BaiduとIntelが共同で開発しているエッジコンピューティング技術はこれからAIを用いた活用事例として参考にできるだろう。