AIが搭載されたBIはビジネスの問題をどう改善するか?

いまではすっかりおなじみのAI(人工知能:Artificial Intelligence)。Amazonの商品レコメンド機能や、Siriの音声認識・検索機能、ゲームなど多岐にわたり、これらの技術は当たり前のように用いられている。

ビジネスシーンにおけるAIの活用は、BI(Business Intelligence)においても活用が期待されている。

BIとは、ざっくりと説明すると指定されたデータを分類・抽出・集計を行うツールのことである。また様々な角度からデータの分析をおこなうこともできる。日報や月報といったものから、過去のデータからも抽出することができるため、BIを用いることによってデータ分析のために大幅な時間を割く必要がなくなる。

まだパソコンが普及していない時代はデータの分析を人間が行っていた。データ分析は長年の経験によってある程度の傾向はわかるが、そのためには熟練した経験と知識が必要だった。しかし現在はパソコンが普及し業務にはスピーディさが求められるようになってきた。膨大なデータの集計・分析をおこなうことはもはや人力では難しい。BIは業務におけるデータ分析や集計を行うことによって、重要な経営判断をおこなうための無駄を削ぎ落としたデータとして活用することができる。

AIとBIの大きな違いとは?

AIとBIの大きな違いはなんだろうか。
AIは幅広い分野で技術を活用できるのに対し、BIはビジネスの場でしか活用できないというのは大きな違いである。

AIはデータ分析に加え、分析結果から最良と考えられるアイデアを「提案」することができる。しかしBIはデータ分析などをおこなうが、得られた分析結果について提案することはできず、人間が分析結果をもとにして考える必要がある。現代のBIに求められているのは、分析結果から導き出される提案である。BIツールを販売している企業は、AIをはじめとした最先端テクノロジーを搭載したBIを発表している。

AIが搭載されたBIツールの例:Salesforce Einstein(セールスフォース・アインシュタイン)

 AIが搭載されたBIはビジネスの問題をどう改善するか?

BIツールとして有名なもののひとつに「Salesforce」がある。Salesforce EinsteinはAIが搭載された製品である。SalesforceはCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)改善・向上のためのBIツールだ。最先端の機械学習、ディープラーニング、予測分析、自然言語処理、Smart Data Discoveryによってデータの分析と活用を行う。

Salesforceは企業のさまざまな部門において活用することができる。SalesforceのBIツールを活用することで、各部門が行っている業務を具体的に数値化することが可能だ。例えば、各部門に分けたときにSalesforce Einsteinが行う機能はこのようなものがある。これらは一部の機能で、Salesforce Einsteinには他にも多彩な機能が備わっている。

●営業部門
・営業担当者別の売上を瞬時にグラフ化
・過去の実績から受注につながりそうな見込み客をスコアリングすることで営業の優先順位をつける
・Einstein 商談インサイトで商談成立のために戦略を立てることができる

●サービス部門
・顧客からの問い合わせに対して過去の事例から解決策を迅速に提案する
・サービス対応を改善することにより顧客の満足度を高める

●マーケティング部門
・ECサイトにおける顧客の見えづらいウェブサイト内の動線を可視化する
・顧客の嗜好にあった販促メールを送信することができる
・機械学習とパターン分析により、コンバージョン率アップにつなげる

Salesforce Einsteinでは、モバイル端末による操作が簡単にできるためいつでも、どこでもデータの分析を行うことができる。

Salesforce Einsteinを導入したことによって各部門間における情報共有の行き違いによる抜け漏れを改善することや、時間のかかっていた集計作業をなくすこと、またKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の可視化によって経営判断を楽にすることなど、得られるメリットは多岐にわたる。

BIツールを利用することよって人が業務に時間をかけなくても良くなる分、通常業務に追われることなく新規顧客の獲得や売上のための改善について集中して取り組むことができる。企業によって業務における悩みはそれぞれ異なるとは思うが、Salesforceの導入企業の事例は参考になるだろう。

クリックテックは2018年にAI搭載のBIを発売予定

 AIが搭載されたBIはビジネスの問題をどう改善するか?

画像出典:QlikTech
https://www.qlik.com/ja-jp

BIツールを販売している企業としてクリックテックも有名だ。クリックテックはQlik View、Qlik SenseというBIツールを販売している。

Qlik Viewではガイデッド・アナリティクス機能が備わっており、タッチ&クリックで直感的に操作することができる。画面も見やすく、データの比較が行いやすい点も魅力だ。

QlicSenseは直感的な操作ができるところが特徴としてある。グラフの作成もドラッグ&ドロップで簡単に行うことができる。マルチデバイスに対応しているため、どこでも必要なデータにアクセスすることができる。

同社は2018年にAIを搭載したBIツールを販売する予定で、専門家でなくとも簡単に操作できる製品の開発を目指している。QliktecのBIツールの特徴として、簡単にデータ分析が行えることやデータの可視化が容易になることが挙げられる。またさまざまなビッグデータをつなぎ合わせてデータをまとめることも可能にする。

IT Proの記事では、2018年にAIが搭載される予定のクリックテック社の製品について次のようにまとめている。

新しいエンジンは適切な可視化手段を提案したり、興味深い特徴を示すデータの組み合わせを提案したりする。デイトンCTOはこうした新しいBIツールを、従来のBIをAIで拡張する「拡張知能(オーグメンテッドインテリジェンス)」と名付けた。

 クリックテック・ジャパンの藤堂正憲カントリージェネラルマネージャーは「日本ではデータサイエンティストが不足している。企業は教育機関での育成を待てる状況ではなく、現場のユーザーがデータを分析できるようにしないとならない」と指摘。BIツールが進化して、現場ユーザーに不足するリテラシーを補う役割を果たすとアピールした。

参考:IT Pro、「1年後にBIにAIを搭載」、米クリックのCTO明かす http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/061601685/

新しい製品ではよりBIを使いこなすためのヒントがAIによって提案される。これにより一層ビジネスにおける業務効率化やデータ活用が期待できる。

まとめ

これからの時代は、AIが搭載されたBIは常識になっていくことだろう。人間が下す経営判断は経験に基づくものであるが、BIが提案するアドバイスによって人間が別の視点からの業務改善や経営判断をおこなうことを可能にする。