量子コンピュータは、超高速スパコンでも目まいがする、組合せ最適化問題を現実的な時間内に解く。現在その実現に向け様々な固体量子ビットが研究されている。半導体スピン量子ビットは特に、集積性や既存半導体技術との親和性から期待されている。
極小半導体箱(量子ドット)に閉じ込めた電子のスピン状態をデータの最小単位"ビット"として扱う。量子ドットをビット状態に設定するには、デバイスの複数ゲート電極電圧をうまく調整する必要がある。従来それはベテランの技で行われてきた――が、大規模量子コンピュータの実現に向けて今後さらに量子ビット数を増やしていく際、対象となる制御パラメーターも増えてしまい、調整が複雑化する。
多数の量子ビットを連動させ、制御する必要がある。大規模なそれでは、調整完了までに時間がかかってしまったり、調整自体が不可能になってしまったりすることが懸念されている。パラメーター調整を自動化することが重要であり、課題になっていたという。
東北大学大学院工学研究科(大塚研究室)、WPI-AIMR、未踏スケールデータアナリティクスセンター(志賀研究室)の研究グループは、2つの量子ドットが静電的に結合した二重量子ドットのシミュレーションデータをCNN(畳み込みニューラルネットワーク)に学習させることで、電荷状態の自動推定器を実現し、実際の実験データにおける電荷状態推定を実証した。
Grad-CAM(CNNによる画像分類予測時に特徴領域を可視化する技術)を用いることで、推定器の判断根拠を可視化し、さらなる性能改善が可能であることも実証した。上記推定手法とパラメーターの自動最適化手法を組み合わせて、量子ドット調整自動化を進め、量子コンピュータの大規模化に貢献することが期待されるという。一部JSPS科研費などの支援を得て行われた研究の成果は、APL Machine Learningに掲載された。