ホウレンソウ、植物工場で高品質のそれが大量に促成栽培できる

栄養豊富な緑黄色野菜「ホウレンソウ」は、通年消費量が多い。露地もののそれは秋から冬が栽培適期で、日長が12時間を超える夏場、栽培温度が15℃以上の環境下では、商品価値が失われる抽苔(ちゅうだい:花芽を形成し、茎が急速に伸びる現象)が発生しやすくなる。

抽苔は出荷量減少に直結する。同現象が発生しやすい夏の時期(7月~9月)は全国的にホウレンソウの生産量が激減――。需要に対し、通年の安定した生産に至っていないのが現状だ。そのため、光や温度が管理され、虫や雑菌等が混入し難く、農薬不要なクリーンな環境下で栽培が可能な「人工光型植物工場」での安定生産が期待されている。

植物工場では光の照射時間や温度を植物に合わせて決められる。今日、ホウレンソウの栽培は可能となっているものの、生産性を高める(収穫量増)ために日長を12時間以上に延長すると抽苔の発生を助長させてしまう――ゆえに、植物工場におけるホウレンソウは、生産性を高めた栽培が難しい作物の一つとなっていて、これまで普及していなかったという。

西松建設は、玉川大学との共同研究により、LED等の人工光源を使用した人工光型植物工場でホウレンソウの促成栽培方法を確立した。栽培時の栄養濃度、光の強さ、植え方等について検討を重ねた、新条件では、20時間の日長および20~25℃の栽培温度でも抽苔を発生させずに栽培できること、そして収量は従来条件(12時間の日長)栽培期間との比較で1.6倍増加し、生産性を高められることも確認した。

20~25℃はリーフレタス向けの室温であり、収穫時サイズもそれと同等となるため、リーフレタス工場でホウレンソウの栽培が可能となるという。同社は上記栽培方法を、同大学の機能性付加方法と組み合わせ、植物工場における高機能性ホウレンソウの生産方法を検討していく。将来的に生産性と高品質化を両立させた植物栽培の技術開発を目指していく考えだ。