ADASや自動運転システムの性能および機能安全性を向上させる

いわゆる自動ブレーキなどの先進運転支援システム(ADAS)が進化を続けている。昨今、次世代のADASや自動運転システムに向けて、60TOPSとか120TOPS(兆回オペレーション/秒)といった高い演算能力――推論・機械学習性能を、低消費電力で達成することが求められている。

自動運転システムではさらに、物体認知から制御指示までの大半の信号処理において、自動車向け安全規格ISO 26262で最も厳しい安全性レベルとなるASIL D(ISO 26262-9:2018本文中のFig.1。日本語解説:日本自動車研究会)の機能安全を実現することが課題になるという。

ルネサスは、ADASや自動運転システム用として、性能と消費電力の最適化を図り、高い機能安全レベルをサポートする車載向けプロセッサ技術群――①電力効率に優れた高性能CNNハードウェアアクセラレータ、②自己診断が可能なASIL D向けセーフティメカニズム、③ソフトウェアタスク間の無干渉(FFI)支援機構を開発した。同社はこれらの技術を車載用SoC(システムオンチップ)の「R-Car V3U」に適用した。

①について、60.4TOPSの高いディープラーニング性能と13.8TOPS/Wの高い電力効率を世界最高レベルで両立したCNN(畳み込みニューラルネットワーク)ハードウェアアクセラレータコアを開発。②では、偶発的に発生するハードウェア故障を高速に検出、制御する高度なセーフティメカニズムを開発。これにより、高い故障検出率の検出機構を低消費電力で実現することが可能になる。

そして③において、SoC上で混在する異なる安全性レベルのソフトウェアタスクを相互干渉なく動作させる機構を開発し、ASIL Dに向けた機能安全の強化も図ったという。同社は今回の成果を、国際的な固体素子回路オンライン会議「ISSCC 2021」にて発表した。