ディープラーニングで血流解析、大動脈・冠動脈のそれを1秒で終える

血管内で血流が生じる。「流れ場」を知ることが、循環器疾患の病理解明や、治療方針策定、新しい治療デバイス開発等、様々な面で注目を集めている。それを知るために、侵襲的/非侵襲的な血流計測や、コンピュータを用いた数値流体力学(CFD)解析が行われてきた。

従来しかし、計測における詳細な流れ場を知るための解像度の不十分性や、CFD解析に要する長い計算時間が問題であったという。東北大学流体科学研究所太田研究室・安西眸助教らの研究グループは、ディープラーニング(深層学習)技術を用い、医療用画像から構築した血管形状に対して流れ場を瞬時に推定する技術を開発した。

今回、大動脈と冠動脈を含む血管を用いて、CFDで得られた流れ場をディープラーニングネットワークに学習させた。その学習済ネットワークに点群の位置情報(血管形状を表す)を入力すると、CFD解析によるものと同様の速度場、圧力場を出力する。しかも、CFD解析で約10分間かかっていた血流解析――血流場を得ることが、当該ディープラーニングでは約1秒で可能になった。

CFD対ディープラーニング出力の速度の平均絶対誤差は10%以下、特に冠動脈では5%以下となった。圧力の平均絶対誤差は8%以下で、冠動脈では4%以下となった。両手法で冠動脈狭窄部におけるFFRを算出したところ、強い線形の相関(r = 0.9580)がみられた。このたび開発したネットワークは、流れ場をよく予測していると考えられる。入力データの数を揃えたり、順番を並べ替えたりといった事前処理を必要としない――

ゆえに、複雑な血管形状でも適用が可能だという。現在、心血管のみならず、脳やその他の血管でもネットワークを学習させるための検討を行っている。研究グループの成果は、Communications Biology誌に掲載され、そのソースコードが雑誌ウェブサイト(zenodo)で公開されている。