ドローン×AI、クラウドも基盤に建築物の外壁調査を効率化

国土交通省の予測によると、建設後50年を超える社会インフラ施設の割合はこれから加速度的に高くなる。現在、日本は熟練技術者の大量リタイアに加え、少子化といった社会問題を抱えていて、高層ビル等の建築物を含む各種施設の維持管理が今後ますます難しくなると予想される。

日本社会の超スマート化では、「ソサエティ5.0」を掲げる政府が、小型無人機ドローンや人工知能(AI)などを活用する未来図を描いている。一方、社会インフラの点検をドローンのみで行うことはまだ認められておらず、専門技術者による近接目視を必須としている。理由は、ドローンからのデジタル画像よりも人間の網膜に映った画の方が精確であり、技術者が直接見ればきっと正しい判断が下せる、との意見が過去に大勢を占めていたからだろう。

1月30日、社会インフラと同様に定期的な保守点検が求められる建築物について、日本システムウエア(NSW)、DJI JAPAN、日本マイクロソフトは、現状人手に頼っている外壁調査を民生用ドローンとAI技術にて行う「建築物メンテナンスサービス」の開発で協業すると発表した。3社はそれぞれの強みを活かしたサービスを共同開発することにより、建築物の外壁調査業務効率化の推進をめざすという。

NSWは多様なデータを数値化する「ToamiVisionシリーズ」のひとつ「クラックビジョン」を用いて、ディープラーニング(深層学習)により建築物のひび割れを判定するAIエンジンの作成と、クラウドシステムの構築を行う。また、ドローンの操縦や実地作業手順、データ分析など専門的なプログラムを体系的に受講できる「UTC」を展開中のDJI Japanは、外壁調査におけるドローン操縦者向けトレーニングカリキュラムを提供する予定。

そして日本マイクロソフトは、AIおよび機械学習における技術をドローンに活用するグローバルな戦略的パートナーシップをDJIと締結していて、今回、日本における第一弾プロジェクト、NSWの持つAIエンジンとともに建築物の調査業務の実用化に向けた試験を行う基盤として、パブリッククラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」を提供している。

「建築物メンテナンスサービス」について、3社はすでに実証実験済みだ。ドローン撮影した建築物の全体画像を3Dモデル化し、AIで自動抽出したひび割れ個所を3Dモデルに重ねた損傷図を作成するシステムを構築し、検証した。結果、ドローンの撮像から一般的なひび割れの許容範囲といわれている0.2mm幅相当のひび割れ箇所の検出ができたという。

この度の成果は、ひび割れ検出技術とドローン撮影・操縦技術が実用に耐えうることを示したものであり、今後はより巨大な建築物へも同サービスを適用できるよう改善していくという。3社は、建築物メンテナンスへのIT(情報技術)活用の取り組みをともに推進していく構えだ。