停電時、船と車で昇降機を動かす

停電時、船と車で昇降機を動かす
かつて9階に住んでいた。マンションにはエレベーターが1基しかなく、夏、買い物から帰ってくると、施設点検とやらでそれが止まっていた。
再稼働を待つほどの暇人ではない、短気な筆者はらせん階段を登った。汗でパンツも肌に張り付く、6階あたりでめまいを覚えた。 Tシャツの裾を扇いで風を入れ、下界を見ると、12階に住む顔見知りが手に黄色いビニール袋と黒カバン、肩には白いゴルフバッグ姿で玄関ホールに消えていった。高層住居の災難に、中年男や前期高齢者はまだ堪えられる。しかし幼児を抱いた女性はどうだろう? かかりつけの大学病院が近いし生活が楽だからと、3年前、郊外の戸建てから都心のマンションに引っ越していった72歳の知人が、停電時の苦痛を想定していただろうかとも思う。 病院や役所などでも事情は同じ。いや、非常時に人々が集まり、救護や対策本...

全て閲覧(メンバー限定)